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猫を叱るのは逆効果?実は9割の人がやってしまっている
「コラッ!」と叱ったこと、ありませんか?
猫の困った行動に思わず声を荒げた経験、きっと少なくないはずです。
実際に行ったアンケートでは、「猫を叱ったことがある」と答えた方はなんと約90%。

つまり、ほとんどの人が一度は叱った経験があることがわかります。
でも実は、「猫に叱る」は逆効果になりやすいこと、ご存じでしたか?
今回のブログでは、
・猫にとって叱られるとはどういうことか
・褒める方が有効な理由と、実際の褒め方
・叱らなくて済むために整えたい環境や接し方
について、研究や実例を交えてわかりやすくお伝えします。
日常的な問題行動に悩む方はもちろん、普段は困っていなくても「突発的に困ることがある」という方にも役立つ内容です。

「叱る」はなぜ逆効果になりやすいのか?
まず前提として、動物行動学の中では「罰」と「報酬」という言葉がよく使われます。
このうち「叱る」は“正の罰”と呼ばれます。
正の罰とは、「不快な刺激を加えて行動を減らす方法」。
例えば「噛んだら怒られる」ことで噛む回数が減れば、それは“罰”による学習です。
でも、猫はこの“罰”による学習がとても苦手です。理由は大きく分けて2つあります。

①タイミングが一瞬でもずれると伝わらない
叱った経験のある方なら、「粗相を見つけたときに思わず怒鳴ってしまった」「ソファで爪をといでいるときに大声を出した」というケースがあるかもしれません。
でも実は、猫に「いま叱られている理由」を伝えるには、その行動の“1秒以内”に反応しなければ意味がないといわれています。
なぜなら、猫の脳は「目の前で起きていること」以外を結びつけるのがとても苦手だから。
たとえ2〜3秒でも遅れると、猫には「いきなり怒られた」「この人、よくわからない」という不安や恐怖の感情だけが残ってしまいます。
それが、信頼関係をじわじわと壊していくのです。
②罰の記憶は“行動”ではなく“感情”として残る
人間のように「こうしたら怒られるからやめよう」と論理的に学ぶわけではない猫にとって、罰は「ただ怖かった」という記憶になります。
この「怖さ」は、相手(=飼い主)への不信感に直結します。
しかも、怒られたことへの恐怖から
・隠れて粗相するようになる
・人の気配を避けるようになる
・触ろうとすると攻撃する
など、かえって問題行動が悪化することも。
実際、ある研究では「罰でしつけたグループは、罰を使わないグループよりも粗相の頻度が12倍高かった」と報告されています。
つまり、叱ることで望ましい行動が減るどころか、猫にとっても飼い主にとってもつらい結果を招きやすいのです。

では、どうする?「褒める」は猫に伝わる
叱るのではなく、猫にとって嬉しいこと=報酬を与えることを“正の強化”と呼びます。
これは「望ましい行動を増やすためにご褒美を与える」方法で、猫にとっては非常に学びやすい方法です。
もちろん、褒めるタイミングも“すぐ”が理想。でも叱るときほど神経質にならなくても大丈夫です。
なぜなら、猫はポジティブな感情を伴った記憶は「なんとなく良かったこと」として残しやすく、多少の時間差があってもその行動を繰り返すようになるからです。
褒め方は、「その子がうれしいと思える形」で伝えてあげるのがコツです。たとえば──
・名前を呼びながら褒める
・気持ちのいい場所を撫でる
・小さなおやつをあげる
・好きな遊びで少しだけ遊ぶ
猫の性格や関係性に合わせて工夫してみてください。

トラブル別:「叱る」前にできること
ここでは、猫との暮らしの中でよくある困りごとを2つのケースに分けてご紹介します。
【ケース1】日常的な困りごとが続いている
布団での粗相や、家具での爪とぎ、不仲猫への追い回しなど、日常的に繰り返される行動に悩んでいる場合は、「成功したときに大げさに褒める」ことから始めるのがおすすめです。
例えば…
・トイレで排泄できたときに
・爪研ぎして良い場所で研いだとき
・不仲な猫と落ち着いて過ごせたとき
猫が「これをしたら嬉しいことがあった」と感じる体験を積み重ねることで、自然と望ましい行動が増えていきます。

【ケース2】普段は問題ないけど、突発的に困ることがある
「基本的には困っていないけれど…」という方も、とっさの場面で困った行動をされることがあります。
例えば、うちでは火を使っているときにキッチンへ猫が上がってくると、危険なので思わず声を荒げてしまうことがあります。
でも本来は、それ以前に「上がれない環境」を整えておくことが大切。
・調理中は入れないようゲートを設置する
・猫が登りたくなる“高い場所”を他の場所に用意する
など、叱る必要のない環境づくりこそが、猫にとっても人にとってもストレスのない方法です。

叱らなくても済む関係を築いていくために
猫の問題行動の多くは、「猫を変える」のではなく「人の接し方や環境を変える」ことで改善できます。
叱ることに疲れている方も、「叱りたくないのに、つい声を荒げてしまう」という方も、まずは“褒められる行動”に目を向けるところから始めてみてください。
猫は本来、とても空気を読む動物。
安心できる環境と、わかりやすいリアクションの中でこそ、のびのびと行動を学んでいけるのです。
最後に:信頼関係は、日々の積み重ねから
怒るより、できたときにご褒美。
その方が、猫もあなたも、気持ちよく暮らせます。
猫の問題行動の背景には、必ず何か理由があります。
「この子はわがまま」「性格が悪い」ではなく、その子が“そうせざるを得なかった背景”に目を向けることで、関係性は大きく変わっていきます。
もし、どう対応していいかわからない場面があるときは、個別アドバイスで、あなたのおうちに合った方法をご提案しています。
2,000頭以上の猫たちが、アドバイスによって行動を変えてきました。
あなたと猫が、もっと安心して過ごせるように。一緒に考えていけたら嬉しいです。

今回のブログの内容は、ショート動画でもご覧いただけます。

保護猫を幸せにするアドバイザーとして、飼育トラブル・室内環境・保護活動・商品やプロジェクトのアドバイスや監修を行っています。保護猫シェルターや、シェルターを持たない一時預かりプラットフォームの運営を経て、現在は「みんなで猫だすけ」アプリの開発・運営を行う。
資格:キャットライフアドバイザー/猫との住まいアドバイザー/ペット共生住宅管理士/犬猫行動アナリスト/愛玩動物飼養管理士2級 他